🎯 結論:あなたは既に世界最強クラスの保険に入っている!給料から引かれる社会保険料の中身は「医療・年金・介護・失業・労災」の5つの保険。この中身を知らないから、同じ保障を民間保険で二重に買わされる——まず自分が持っているものを知れ!
給与明細の「社会保険料」の中身は5つ
税金の記事で書いたとおり、額面から引かれる中で一番重いのが社会保険料(約15%)です。その内訳がこちら。
| 保険 | 何に備える | 誰が払う |
|---|---|---|
| ① 健康保険 | 病気・ケガの医療費 | 労使折半 |
| ② 厚生年金 | 老後+障害+遺族 | 労使折半 |
| ③ 介護保険 | 要介護状態(40歳から徴収) | 労使折半 |
| ④ 雇用保険 | 失業・育休・学び直し | 労使で負担 |
| ⑤ 労災保険 | 仕事・通勤中のケガ | 全額会社負担 |
ポイントは労使折半——会社があなたと同額を上乗せで払っています。「高い」のは事実ですが、同じ保障を自力で買うことは不可能な水準です。
① 健康保険——医療保険が不要になる本丸
- 3割負担:どんな治療でも自己負担は原則3割。
- 高額療養費制度:月の医療費自己負担に上限(年収500万円前後なら月9万円弱)。詳細は保険見直しの記事で書いたとおり、大企業の健保なら付加給付でさらに下がります。
- 傷病手当金:病気で働けない間、給料の約2/3を最長1年6か月支給。医療保険どころか就業不能保険まで、既にここに入っています。
- 出産育児一時金・出産手当金:出産費用と産休中の収入もカバー。
申請の実務:窓口は「社内の担当部署→健康保険組合」
健康保険関係の申請は、社内の担当部署(総務・人事)経由で健康保険組合へというフローです。そして2つ、必ず調べてください——①自分の組合に「付加給付」があるか(あれば月の自己負担がさらに下がります)。②高額療養費が自動で戻る組合か、申請が必要な組合か。ここのルールは組合によって本当にバラバラです。「知らなかったのでもらえなかった」が普通に起きる世界なので、元気なうちに一度調べておくのが正解です。
健康保険と国民健康保険の違い
会社員の健康保険(組合健保・協会けんぽ)と、自営業の国民健康保険は別物です。健康保険は労使折半で、傷病手当金・出産手当金があり、家族を保険料負担なしで扶養に入れられる。国民健康保険は全額自己負担で、傷病手当金なし・扶養の概念なし(家族の人数分かかる)。「健康保険がある会社員に民間の医療保険は不要」という当ブログの結論は、この手厚さが根拠です。
協会けんぽの人へ——付加給付がなくても、結論は同じ
中小企業の多くが加入する協会けんぽには、組合健保のような付加給付はありません。頼れるのは前提である高額療養費だけになります。それでも——月の自己負担上限(年収500万円前後で9万円弱)は生活防衛資金で普通に受け止められる金額です。高額療養費だけで、民間の医療保険が全く不要であることは分かる。たとえ今後、政府が高額療養費の自己負担上限を引き上げたとしても、この結論は動きません。
「公的保険が危ないから民間保険を」は完全に間違い
保険営業の定番トークに「社会保険料も高額療養費の負担もどんどん上がっていく。だから民間保険で備えましょう」があります。これは完全に間違いです。考えてみてください——民間医療保険の保険料は、公的保険が機能している前提で設計されています。3割負担と高額療養費があるからこそ、あの保険料であの給付を約束できている。もし公的保険が本当に崩れれば、医療費の全体が跳ね上がり、民間保険の保険料も給付条件も同じように悪化します(保険会社は改定できる側です)。つまり、公的保険が沈む船なら、民間保険は同じ船の上に建てた小屋にすぎない。公的保険の悪化に備えられるのは保険ではなく、自分の資産だけです。
② 厚生年金——「老後の積立」ではなく3つの保険
年金を「払い損の積立」と思っている人は、機能の2/3を見落としています。
- 老齢年金:終身で受け取れる長生き保険。
- 障害年金:病気やケガで働けなくなったら、現役世代でも支給。
- 遺族年金:あなたが亡くなったら、配偶者と子に支給。「生命保険は子どもがいる期間だけ掛け捨てで最小限」と言える根拠がこれです。必要な死亡保障=生活費−遺族年金、で計算します。
年金の全体像:国民年金の上に厚生年金が乗る「2階建て」
1階が全員加入の国民年金、2階が会社員の厚生年金(保険料は労使折半・標準報酬月額で決まる)。自営業は1階だけなので、上乗せとして国民年金基金という制度があります。さらに3階として確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)——自分の口座で運用する「本当の意味での積立」です。そして比喩的に言えば、NISAこそが真の個人年金と呼ばれることもあります。自由に入れて、自由に引き出せて、増えた分が全部自分のものだからです。
一方、保険会社が売る「個人年金保険」はゴミです。貯蓄型保険の記事で書いたとおり、高い手数料を抜かれた残りで細々と運用されるだけ——公的年金・DC・NISAが揃っている人に、入る理由が1つもありません。
③ 介護保険——40歳から払い、使うときは1〜3割負担
40歳から給与明細に登場します(ライフプラン表の「介護保険料の負担開始」はこれ)。使い方は——市区町村の窓口か地域包括支援センターに要介護認定を申請→認定が下りたらケアマネジャーとケアプランを作成→訪問介護・デイサービス・福祉用具のレンタル(介護ベッド等)・手すり設置などの住宅改修が1〜3割負担で使えます。親の介護が視野に入ったら、まず地域包括支援センターへ。これを知っていれば、民間の介護保険は不要です(保障を買い足すより貯金で備える領域)。
④ 雇用保険——ハローワークに「自分で」申請する
失業給付(会社都合なら手厚い・自己都合でも受給可)、育児休業給付、教育訓練給付がここです。健康保険と違い、雇用保険関係は自分で地元のハローワークに申請します。実務の注意を2つ。
- 受給中に働ける時間の基準は、ハローワークによってバラツキがあります。「週◯時間まで」の運用が窓口ごとに違うので、必ず自分のハローワークで確認を。
- 窓口の案内が間違っていることが、度々あります。おかしいと感じたら鵜呑みにせず、AIに壁打ちして制度を確認する・別の担当者にもう一度聞く——ここまでやって入念に確認してください。数十万円単位で結果が変わります。
育児休業給付は給料の50〜67%ですが、社会保険料の免除と税金を考えると手取りベースでは実質8割程度になります。「収入が半分になるから育休は無理」は計算違いです。
⑤ 労災保険——「健康保険証を出さない」が鉄則
仕事中・通勤中のケガや病気は治療費が実質無料+休業補償。保険料は全額会社負担です。そして誤解が多いのがここ——
- 対象は広い:通勤中の事故はもちろん、作業中の熱中症も、屋外作業での蜂刺されもOK。「ケガらしいケガ」でなくても仕事起因なら労災です。
- 病院の窓口で健康保険証を出さず、「労災です」と告げる:これが最重要。健康保険で受診してしまうと、あとで労災への切り替え手続きが面倒になります。
- 労災指定病院が望ましいが、指定外でも可能:指定外の場合は一旦10割を自己負担し、後で請求して返してもらう手続きになります。
- 余裕があれば、別の社員が事務所から病院へ電話して「こういう状況の労災です」と伝えておくと、受付が格段にスムーズです。
出産・育休まわり——知らないと損する3つ
- 出産関係の給付は「行政」と「健康保険組合」の両方を調べ、高い方をもらう:自治体の助成と組合の給付(付加給付含む)で条件が違います。両方調べて有利な方を。
- 育休中の社会保険料免除は「月末から取る方が得」:14日以上の取得で、その月から保険料が免除されます(しかも納めたことにしてくれるので年金記録は減りません)。月初から取るより、月末にかかるように取得する方が免除される月数で得になる設計です。
- 医師発行の「出産予定日」の書類で申請できる:予定日どおりに生まれていなくても取得可能です。生まれるまで申請を待つ必要はありません。
どこに申請するのか——窓口は3系統だけ
| 系統 | 申請フロー |
|---|---|
| 健康保険関係(高額療養費・傷病手当金・出産) | 社内の担当部署 → 健康保険組合 |
| 年金・社会保険の手続き | 会社の総務 → 社会保険労務士 → 年金事務所(会社経由で進む) |
| 雇用保険関係(失業給付・教育訓練給付) | 自分で地元のハローワークへ |
そして大原則——これらは全部「申請しないともらえない」お金です。高額療養費、付加給付、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、失業給付、育休給付、労災の給付、要介護認定。制度はあなたを自動では助けてくれません。知っていて、申請した人だけが受け取れます。
結論表:民間保険と「既に持っている保障」の対応
| 営業が売りに来る商品 | あなたが既に持っているもの |
|---|---|
| 医療保険・がん保険 | 【健康保険】高額療養費+付加給付、+貯金 |
| 就業不能保険 | 【健康保険】傷病手当金+【厚生年金】障害年金 |
| 死亡保険(大型) | 【厚生年金】遺族年金(不足分だけ掛け捨てで) |
| 個人年金保険 | 【厚生年金】老齢年金+NISA |
| 民間の介護保険 | 【介護保険】要介護認定で1〜3割負担、+貯金 |
| 養老保険 | そもそも保険と貯蓄を混ぜたゴミ。対応不要 |
この表が、当ブログが「民間保険は3つだけ」と言い切る根拠です。営業マンは絶対にこの表を見せません。
よくある質問
| Q. 収入の少ない親は扶養に入れられる? |
| A. 年金収入だけの親なら、税の扶養(扶養控除)と健康保険の扶養(親の保険料ゼロ)に入れられるケースが多くあります。「なんとなく」で入れていない家庭が非常に多い——詳しくは確定申告の記事で。 |
| Q. 自営業・フリーランスは? |
| A. 国民健康保険+国民年金になり、傷病手当金・遺族/障害の厚生年金部分が大きく薄まります。会社員より民間保険(掛け捨て)の出番がやや増える立場です。副業で独立を考える人は、この差もコストに入れてください。 |
| Q. 社会保険料を安くする方法はある? |
| A. ほぼありません。標準報酬月額の小細工などは枝葉です。下げる努力より、払った分の制度を使い倒す(申請漏れをなくす)方が確実に得です。付加給付・高額療養費・傷病手当金は、全部「申請しないともらえない」お金です。 |
| Q. 退職したら健康保険はどうなる? |
| A. ①次の会社の健保 ②任意継続 ③国民健康保険 ④家族の扶養、の4択。家族の扶養に入れるなら文句なしの最安です。入れない場合、②任意継続(最長2年間・全額自己負担)と③国保はどちらもかなり高額になるので、保険料の見積もり・付加給付の有無・切り替えの煩雑さを並べて決めてください。注意は期限——任意継続の申請は退職後20日以内(実質2週間強)しかありません。退職前に決めておくことです。 |
まとめ:最強の保険は、給与明細の中にあった
社会保険は「取られているもの」ではなく「既に加入している5つの保険」です。中身を知れば、民間保険の営業トークの大半が「もう持っているものの二重売り」だと分かります。保障を買い足す前に、まず持ち物の確認から。

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